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戒名のおはなし

戒名とは「そのように成る、成仏する」という期待を込めた名前をお坊さんから授かる。

それが「戒名」です。

お釈迦様がまだご在世のころ、ウパティッサという若者がいました。ある時ウパティッサはお釈迦様の説法を聞き、大きな感銘を受けてお釈迦様の弟子となることを決意しました。またその時お釈迦様から弟子としてのお名前を戴くことになりました。また、ウパティッサの母親はとても賢い女性で名前はシャーリーといいました。シャーリーの子供という意味のシャーリプトラ(舎利子)といお名前を戴くことになりました。このことが「出家得度、受戒」の始まりです。お釈迦様の説法をよく聞き、勉強を重ねたシャーリプトラは、後にお釈迦様の説法を代行するような優れた仏弟子(釈迦十大弟子の一人、智慧第一)となりましたので、「小さな仏陀、シャーリプッタ」とも呼ばれるようになりました。シャーリプトラの後から来た弟子たちも同じように得度受戒してお釈迦様からお名前(戒名・法名)を授かり、修行を重ね次々と悟りを拓いていきました。

お釈迦様の弟子であるお坊さんから葬儀の時に戒名を授かることは、仏弟子となって悟りをひらいた者だけが「彼岸」に行ける縁を得たという事を意味します。同時に故人さまが戒名を授かって仏弟子となる事は「七代に亘って当家を興す得を得た事」を意味しているのです。また「七」という数字は「永遠、無限、全て」を表します。

また「院号」とは、いったいどのようなものなのでしょうか。江戸時代以前「院号」は寺を建立し寄進するなど、大きな徳を積んだ身分の高い人に、寺から感謝の意味も込めて贈られる特別な称号でした。ですから「院号」は一般の方には縁の無いものでした。しかし江戸時代以降になると、各地の山に住む山伏(修験者)が、一般民衆に対して執り行っていた祈願・供養・葬儀などを寺檀制度成立以降は寺が行うようになり、一般の方々も寺から戒名を貰えるようになりました。お金や徳を寺に積み上げれば、もっと立派な戒名を貰える。戒名はいつしか家の格式を競う道具に変化して、本来の意味から大きくかけ離れて行きました。因縁の「因」は種、「縁」は働きかけを意味します。戒名という「縁」を本来の正しい意味に戻さなければなりません。

日本の一般常識に於きましては「成仏する」という事を、悟りを拓いて密厳浄土(彼岸)に生まれ変わることを指しております。成仏出来ないということは、故人の魂が密厳浄土へ行けていないことを意味します。本来「成仏」という言葉は、真言宗に於いてはお坊さんが葬儀の最中に引導を渡す事(受戒させて戒名を授け導く事)により、受戒者が悟りを拓いて「仏陀(覚者)」となる事を表します。戒名を授かるという事は、先々故人さまが六道(迷いある者が輪廻する、苦しみに満ちた地獄・餓鬼・修・人間・天の六世界)に落ちない様、或いはたとえ落ちたとしても光明を保ち、地獄を抜け出す事を願うものです。お人柄や功績などを讃えることもそうですが「その様に成る、成仏する」という願いを込めたお名前を、葬儀の時にお坊さんから授かる。それが「戒名」であり、曼荼羅世界(仏の世界)に引入していく為の大切なお名前なのです。